古代から知られていた惑星は、水星・金星・火星・木星・土星の5つでした。肉眼で見え、星空のなかを動き回る星として、どの文明でも特別あつかいされてきました。
その「5つ」という数が、1781年に突然くつがえります。望遠鏡によって、人類が初めて新しい惑星を発見したのです。
太陽からの距離:約28億7000万km(地球の約19倍)
直径:約5万1000km(地球の約4倍)/質量:地球の約15倍
公転周期:約84年/自転周期:約17時間/衛星:28個以上
🔑 中学理科とのつながり:太陽系の天体(3年)/地軸の傾きと季節(3年)/光と色(1年)
音楽家が見つけた惑星
発見者のウィリアム・ハーシェルは、もともとプロの音楽家でした。オルガン奏者として教会に勤めながら、独学で天文学を学び、自分で望遠鏡を磨いて作るようになります。妹のカロラインも助手として、そして自身も優れた天文学者として彼を支えました。
1781年3月、ハーシェルは自作の望遠鏡で空を見ていて、恒星にしては様子のおかしい天体に気づきます。星ならば点にしか見えないはずなのに、これは倍率を上げると円盤に見える。しかも日を追うごとに位置が動く。
はじめは彗星だと思われました。しかし軌道を計算すると、彗星のような細長い軌道ではなく、土星のはるか外側をゆっくり回る円に近い軌道だったのです。
これによって、太陽系の広さは一気に2倍になりました。それまで人類が知っていた太陽系の果ては土星だったのですから、地図が突然2倍に広がったようなものです。
ちなみにハーシェルは当初、この星に当時のイギリス国王ジョージ3世にちなんだ名前をつけようとしました。しかし他国の天文学者たちが反発し、最終的にギリシャ神話の天空神「ウラノス」にちなむ名に落ち着いています。
横倒しで転がる、変わり者
天王星の最大の特徴は、この一点に尽きます。
自転軸が約98度傾いている(公転面に垂直な方向から)
(同じ基準で地球は23.4度)
つまり、ほぼ真横に倒れた状態。他の惑星がコマのように回りながら公転しているとすれば、天王星はボールのように転がりながら公転しているのです。
この極端な傾きが、想像を絶する季節を生みます。公転周期は84年。ということは、
- 北極では、約42年間ずっと昼(太陽が沈まない)
- そのあと、約42年間ずっと夜(太陽がのぼらない)
生まれてから42歳になるまで、一度も日の入りを見ない。そんな世界です。
なぜこんな傾きになったのか。有力なのは、太陽系ができたばかりのころに地球サイズの天体が衝突して、星ごとひっくり返されたという説です。ただし決定的な証拠はまだありません。
なぜ青緑色に見えるのか
天王星と、次回の海王星は、美しい青色をしています。この色の理由は、中学1年生で習う光と色の話につながります。
天王星の大気には、水素・ヘリウムに加えてメタンが含まれています。メタンには、太陽光のうち赤い色の光を吸収する性質があるのです。
太陽光にはあらゆる色が混ざっていますが、赤い成分がメタンに吸われてしまうと、残って反射されるのは主に青や緑の光。だから天王星は青緑色に見えるのです。物体の色は「その色の光を反射しているから」- 教科書どおりの現象が、28億km先で起きています。
天王星と海王星は、木星・土星と同じ「木星型惑星」に分類されますが、実は組成が少し違います。水素・ヘリウムだけでなく、水・アンモニア・メタンなどが凍った「氷」を多く含むため、最近では天王星型惑星(巨大氷惑星)として区別することもあります。
そして、ここは太陽系でもっとも寒い場所のひとつです。観測された最低温度は約−224℃。海王星より太陽に近いのに、なぜか海王星より冷たい。内部から出る熱がほとんどないためと考えられていますが、その理由もまだ完全にはわかっていません。
いまだ、たった1回の訪問
天王星には、これまで1機の探査機しか行っていません。1986年に接近したボイジャー2号だけです。
しかもボイジャーが訪れたのは、ちょうど極が太陽を向いている時期で、大気の動きが少なく、天王星は「のっぺりした青い球」に見えました。そのため長く「特徴のない退屈な星」と思われてきたのです。
ところが近年、ハッブル宇宙望遠鏡やジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡による観測で、雲の模様や嵐、そして細い環の姿が次々にとらえられています。天王星の環は土星ほど華やかではありませんが、実は1977年に発見されていました。
アメリカの惑星科学者たちは、次の大型探査計画として天王星探査を最優先候補に挙げています。もし実現すれば、みなさんが大人になったころ、教科書の天王星のページはまるごと書き変わっているかもしれません。
🔭 やってみよう!【問題1】42年の昼と夜
天王星の公転周期は約84年、自転軸は公転面に垂直な方向から約98度傾いています。
① 北極で「昼が続く期間」は約何年ですか。
② 地球の自転軸は、公転面に垂直な方向から23.4度傾いています。日本で夏に昼が長く、冬に短くなるのはなぜですか。
③ もし地球の自転軸の傾きが0度だったら、日本の季節はどうなりますか。
▶ 答えを見る
① 84年のうち、極が太陽側を向く期間はおよそ半分なので 約42年
② 地軸が傾いたまま公転しているため、夏は北半球が太陽の側に傾き、太陽の南中高度が高く、昼の時間が長くなる。冬はその逆。
③ 一年じゅう太陽の高度と昼の長さがほぼ変わらず、季節の変化がほとんどなくなる。
「季節は太陽との距離ではなく、地軸の傾きで決まる」- これが中3天体の最重要ポイントです。天王星は、その極端な実例なのです。
🔭 やってみよう!【問題2】青く見える理由
天王星の大気に含まれるメタンは、太陽光のうち赤い光を吸収します。
① そのため天王星は何色に見えますか。理由も説明しましょう。
② 白い光を当てたとき、赤いリンゴが赤く見えるのはなぜですか。
③ 赤いリンゴに、青い光だけを当てるとどう見えますか。
▶ 答えを見る
① 青緑色。赤い光が吸収され、青や緑の光が反射されて目に届くから。
② リンゴが赤以外の光を吸収し、赤い光を反射しているから。物体の色は「反射している光の色」です。
③ 反射できる赤い光がないため、黒っぽく(暗く)見える。
28億km先の惑星の色も、理科室のリンゴも、まったく同じ理屈で説明できます。
まとめ
天王星は、太陽系のなかでいちばん「わかっていない」惑星かもしれません。なぜ横倒しなのか、なぜ内部から熱が出ないのか、なぜ磁場が中心からずれているのか - 疑問だらけです。
でも考えてみれば、それは幸運なことです。まだ誰も答えを知らない問題が、太陽系のなかにこんなに残っている。 その答えを見つけるのは、これから探査機を設計する人たちであり、そのデータを解析する人たちです。
🪐 シリーズ「太陽系の惑星たち」全8回
① 水星/② 金星/③ 火星/④ 木星/⑤ 土星/⑥ 天王星(この記事)/⑦ 海王星/⑧ 地球
次回は第7弾、海王星。望遠鏡ではなく計算で発見された惑星。太陽系の最果てで、いま何が起きているのか。